collabo-works怪談絵巻 4

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collabo-worksとは!?


「 晩夏 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



「竹の沢(タゲノソ)の水が飲みでえ・・・・・・」

と曾祖母が臨終の床で言ったのだという。
子供だった父はやかんを取ってすぐ外に飛び出した。
シキナイの坂を駆け上がりながら計算した。
竹の沢までは自分の足で片道30分はかかる。
沢まで登るのに30分、下りるのに30分、
戻るのに30分、2時間も婆ちゃが生きているだろうか?と。

泣き声を上げて海沿いの道を走りながら、
水平線を見るとイカ釣り船の灯りが煌いていた。
左前方に真っ黒な岩肌をさらした竹の沢が姿を現した。
崖をよじ登る時、一度やかんを落としてしまった。
「落ぢ着げやい!」
やがて頭上にちょろちょろと水の音がした。
沢に駆け上がって手で湧き水を掬った。
しまった、この時間を計算に入れていなかった。

早う!・・・早う!・・・水たまれちゃ~・・・

水を入れたやかんを持って駆け下りるとき、
崖から滑り落ちて、やかんの水が半分になった。
躊躇したがすぐに決心して、傷だらけになりながら下山した。
海辺の道をとって返した。
すでに辺りは日が暮れて真っ暗になっていた。
オサキ山トンネルの前まで来た時のことだった。

そこに、いるはずのない婆ちゃが立っていたという。
枯れ枝のようにやせ細った手で合掌しながら・・・・・・

父が立ち止まると、婆ちゃは消えた。

「婆ちゃ~・・・待っでくりや~・・・」
父はあらん限り力を振り絞って走りだした。
心臓が口から飛び出すかと思われた。
息をきらして家に戻ると、婆ちゃは死んでいた。
「竹の沢(タゲノソ)の水~ッ」と父が泣いてすがると、

母親(私の祖母)がやかんの水をたっぷり指につけて、
曾祖母の唇を濡らしながらこう言ったという。

「死ぬ前(めえ)に・・・・・・ 
うんめ(美味しい)水だなアで、手合わしでだよ・・・・・・」



                              marc&nagiwo



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by nagiwo | 2004-09-12 22:40 | Collabo-Works
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