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collabo-works怪談絵巻 5

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collabo-worksとは!?


「 人生の秋 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



そこに生える植物にはみな魂が宿った。

雪が消える頃、温もった土の中から芽が出た。
芽はすくすくと伸びて茎の節目に葉が開いた。
梅雨の雨を十分に吸った後で、
待ちかねたように初夏の日差しを浴びる。
そして、小さなつぼみが生まれた。
つぼみは、少しずつ大きくなって、
先端がほころび、
やがて、美しい花を咲かせ、
体の中に次の種子を宿すのだった。

突然身体の一部に変化が現れた。
あれほど屈強だった茎が風に折れ曲がる。
綺麗な花びらは、跡形もなく飛び散って、
見るも無惨な姿をさらす。
身体から種子が落ちて、
無情の風に吹き飛ばされてしまう。
大声で我が子を呼ぶ声が、
枯れ野にこだまする。

悲しみをついばむかのように虫がとりつき、
虫のついた辺りが腐り始める。
悲しみの声を上げても天には届かない。

土下座したようになったものや、
天を仰いでいるもの。
半身を濁流に浮かべているもの。
悲しみにうち震える叫び声が、
天空の彼方へと吸い込まれて行く時、
やがて灰色の雲は空を覆い、
目も見えず、耳も聞こえないものたちを覆い隠す。
気まぐれな風が我が子を運んで来たことに気づかず、
その声も、姿も、確かめることが出来ないでいる。
降り積もる雪に埋もれたままで、夜毎に見る夢は、
叫びながら遠くへ飛ばされて行った我が子のことだった。


・・・・・・雪解けの季節となった。
足元に落ちた一粒の種子が真っ白な根を下ろした。
瑞々しい茎はすくすくと伸びて、
老いさらばえた茎に寄り添いながら、優しく語りかけた。

母さん・・・・・・

泣かないで・・・・・・

守ってあげる・・・・・・


すると老いた茎は風に揺れながら、
待ちかねたかのようにゆっくりとひざを折り曲げた。
両手をついて、頭を垂れ、
目に涙を浮かべながら朽ち果てて行くのだった。



                              marc&nagiwo



by nagiwo | 2004-10-10 20:33 | Collabo-Works
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