collabo-works怪談絵巻 6

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collabo-worksとは!?


「 命のぬくもり 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



お腹をさすりながら女は言った。
「これが神様の思し召しなら、産んで育てたいの」
それを聞いて、男は少し躊躇した。
子供が20歳になるまで、果たして生きていられるだろうか?と。
これは、その瞬間男が抱いた偽らざる感想だった。
「君の身体が心配なんだ」と男は少し目を伏せた。
「大丈夫よ。本当に強い子なら、ちゃんと生まれて来るから」

その後1週間あまりで女の体調は急に優れなくなった。
重い足取りで産婦人科に行くと、
流産するかも知れないと医師が言った。
50歳では高齢出産の許容範囲を超えているというのだ。
「様子を見ますが、恐らく今晩あたりから出血が始まるでしょう」

その夜、まるで計ったように出血が始まった。
男は車を走らせて女を産婦人科に運んだ。
熟練した看護師がテキパキと対応した。
「心配いらないよ・・・・・・今先生を呼ぶからね」

1時間もしないうちに、不運な命の固まりはゆっくりと母体を離れた。
病室のベッドに戻った後で、女は激しく咽び泣いた。


許して・・・・・・


男は震える女の肩をさすりながら、
「もう、いいから・・・・・・泣くな」と言った。
すると女は、真っ赤に泣き腫らした目でじっと見た。
唇が震えて思うように言葉を発することが出来ないでいた。

・・・・・・あの子を・・・・・・

二度も・・・・・・見殺しにしてしまった・・・・・・


謎めいたその言葉の意味を女から聞き終わったとたん、
男はベッドのへりにへたりこんでしまった。

11月21日。
生まれることの出来なかった子供の出産予定日は、
そのまま、亡くなった娘の誕生日だった。
男は自分の体中に鳥肌がたつのを感じた
震える手で胸ポケットから手帳を引っ張って、
いつも定期券の裏に入れているボロボロになった娘の遺書を取り出した。


【親よりも先立つ不幸をお許し下さい。
あたし、もう一度生まれ変われるんなら、
またお父さんの子供になろうかな・・・・・・】



                              marc&nagiwo



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by nagiwo | 2004-11-15 00:54 | Collabo-Works
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