collabo-works怪談絵巻 13

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collabo-worksとは!?



「 聖夜のあと 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



クリスマスの店先に並ぶ人形を見ると、あの男のことを思い出す。
亡くなった息子へのプレゼントを抱えて首吊り自殺をした、
あの男のことを……

***

買ってきたクリスマスケーキの包みを抱え直してから、
ホームの門をくぐると、仲間が血相変えて駆け寄って来た。

「アイダさ~ん、あんた、何処さ行っとった? サチさんが……」

サチが……死んだ……

身体全体から何かが一気に抜け出ていってしまうのを感じた。
思い出の写真がことごとく焼かれていくような感覚。

仲間と一緒に暗い廊下を走りながら、
サチの声を聞いたような気がした……

***

「今度のクリスマスは何をしようか?」とサチが言った。
「俺は、予定なんかないから……」と答えると、
「またあの娘に来てもらいましょうか?」とサチがニコニコしながら覗いた。
「うん、去年も、そう言えば喜んでくれたっけなあ……」
「何も特別なことはしないけど、あんなに喜んでくれたら嬉しい」

サチは昔から遠慮がちな女だった。
控えめで、絶対に自分から表に出ようとはしない。
夫が、刑事という世間離れした職業に就いていたせいかも知れない。
真夜中に呼び出されたら、どんな状況でも対応しなければならない。
言ってみれば、自分たちの生活などあって無いに等しかった。
それが、あの娘のことになると、
妻は我がことのように積極的に自分の意見を述べるのだった。


だが……その年のクリスマスは、とうとう娘は来なかった。
その代わり次の日、一通の手紙が届いた。

「……いつも招いて下さってありがとう。
でも、もう行きません。
同情や哀れみを受けるのがどんなに辛いことか
あなた方に理解できますか?
父は犯罪者でしたが、私には大切な父でした。
あなたが父を追い込んだのでしょう?
昨年、亡くなる前の母の口から聞きました。
あなたが、最後まで父を疑っていたという話を……」

そこまで読んで、男は手紙を置いた。
取り返しのつかないことをしてしまった。

***

葬儀はホームの一室で執り行われた。
息子が母親の顔を覗いて泣いている。
何年も会っていなかった息子の背中をじっと見つめた。
突然息子がくるっと振り向いてこう言った。

あんたが……殺したようなもんだ……

男はうなだれたまま何も言わなかった。
息子の言葉が胸にヤケ火箸のように突き刺さっていた。

母さんは、毎晩、どんな思いであんたのことを……

男はゆっくり立ち上がって、皆に一礼してからから、表に出た。
ホームの庭は夕方降った粉雪で真っ白である。
月明かりの雪景色はこの世のものとは思えなかった。
記憶の中に、あの晩見た男の子のステップ、フランス人形の顔、
旅館で見た男の遺体、アパートで初めて会った女など、
次から次へと蘇って来た。

自分も死のう……とぼんやり考えた。

するとその時、キュッ、キュッ、キュッと雪を踏みしめるような音が聞こえた。
音のする方向を確かめると、夜道を誰かがやって来る。
ハッ、ハッ、ハッ、と白い息を吐きながら小走りに近づいて来るその姿を見て、
男は全身に鳥肌が立つのを感じた。

おじさん……

「ホームのカエさんから連絡があったの。
おばさんが……亡くなったって?……ねえ?……おじさん
あたし……あたし……おばさんに、謝らなきゃ……」

娘はコートの中から、抱きかかえて来たものを出して見せた。

「おばさん……このフランス人形が大好きだったから……一緒にお別れに来たの」

それを見たとたんに、男はまるで土下座でもするかのようにひざまずいた。
今の今まで、ずっと堪えていたものが、止め処なく頬を伝い始めた。



                              marc&nagiwo


collabo-works怪談絵巻 7 「 聖夜 」
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by nagiwo | 2005-12-22 21:27 | Collabo-Works
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