collabo-works怪談絵巻 14

a0016718_18512933.jpg

collabo-worksとは!?



「 命の川原 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



冷たい川風が吹き抜ける橋の下で、
男は傷ついた猫や仔猫を拾っては育てていた。
亡くなると柔らかな土手を掘っては泣きながら埋葬した。
そんな猫たちを見つめながらいつも思い出すことがあった。

***

……この世には 必ず姿を変えた菩薩がおられるのだぞ

夏の夕暮れ、日本海の入り日を望むオサキ山の断崖に立つ托鉢僧。
雑木林のてっぺんから降りそそいでいたヒグラシの鳴き声。
三十歳を過ぎたばかりの禅明寺の住職は、托鉢の後で手伝った子供たちにこう語りかけた。

「命あるものは 犬も、猫も、人も、 みな この世で辛酸をなめるなだども
それは 仏様の弟子になるための菩薩の修行だ
んだすけ ねらも 苦労だどは思うなや 
ありがでえごどだと思うなだぞ……」

(その時……住職の目には涙が光っていた……)

「ホウジョウ(方丈)様、ホウジョウ様 なしてそんげな話すんなや?」

「ねらに教えでおがねばならね、大事なごどだがらや……」

***

オサキ山でのことから一月も経たないある朝のこと。
村の婆ちゃたちが皆あわてふためいて禅明寺へと走って行った。

「母ちゃ なんか あったんか?」

母親が言った。

「あん、のオ……禅明寺のホウジョウ様が……夕(よ)べな……首吊って死んでしもうだど……めんじょけねのオ……」


***


猫たちが男の足元にまとわりついて来た。

「待でちゃ いま まんまやっさげ」

集めてきた生ゴミの中から食べられそうなところを選んで、
いくつかの猫茶碗に分け与えると、いつものように一匹また一匹と野良猫が集まって来た。

その時男は胸の真ん中あたりに鋭い痛みを感じた……瞬間、雷に打たれたようにオサキ山での住職の話の続きを思い出した。


……たとえ野山で 川原で
寂しくのたれ死ぬごどんなったとて 
なんも悲しむことはねえ
生きているうちに しで来たごどを 
ちゃんと仏様は見でおられるからだ
仏様はいづでもどこでも 
必ず救いにやって来る……

だんだん激しくなる痛みに耐えかねて、男は額に脂汗をかきながらうめき声を上げた。

***

橋の上でふと足を止めた一人の少女が、川原に集まった猫の群れに気づいた。
そして、群れの中でもがき苦しむ男の姿も……。
少女はジョギングしている大人たちを捕まえてこう呼びかけた。

「お願いですから……あの人を……助けてください
あの人は今まで……たくさんの猫の命を助けた人なの……」



                            marc&nagiwo



[PR]
by nagiwo | 2007-01-24 18:57 | Collabo-Works
<< やくそく 遠い声/遠い歌 >>