collabo-worksとは!? 「 命の川原 」 Storyteller:marc ishiya Photograph:nagiwo 冷たい川風が吹き抜ける橋の下で、 男は傷ついた猫や仔猫を拾っては育てていた。 亡くなると柔らかな土手を掘っては泣きながら埋葬した。 そんな猫たちを見つめながらいつも思い出すことがあった。 *** ……この世には 必ず姿を変えた菩薩がおられるのだぞ 夏の夕暮れ、日本海の入り日を望むオサキ山の断崖に立つ托鉢僧。 雑木林のてっぺんから降りそそいでいたヒグラシの鳴き声。 三十歳を過ぎたばかりの禅明寺の住職は、托鉢の後で手伝った子供たちにこう語りかけた。 「命あるものは 犬も、猫も、人も、 みな この世で辛酸をなめるなだども それは 仏様の弟子になるための菩薩の修行だ んだすけ ねらも 苦労だどは思うなや ありがでえごどだと思うなだぞ……」 (その時……住職の目には涙が光っていた……) 「ホウジョウ(方丈)様、ホウジョウ様 なしてそんげな話すんなや?」 「ねらに教えでおがねばならね、大事なごどだがらや……」 *** オサキ山でのことから一月も経たないある朝のこと。 村の婆ちゃたちが皆あわてふためいて禅明寺へと走って行った。 「母ちゃ なんか あったんか?」 母親が言った。 「あん、のオ……禅明寺のホウジョウ様が……夕(よ)べな……首吊って死んでしもうだど……めんじょけねのオ……」 *** 猫たちが男の足元にまとわりついて来た。 「待でちゃ いま まんまやっさげ」 集めてきた生ゴミの中から食べられそうなところを選んで、 いくつかの猫茶碗に分け与えると、いつものように一匹また一匹と野良猫が集まって来た。 その時男は胸の真ん中あたりに鋭い痛みを感じた……瞬間、雷に打たれたようにオサキ山での住職の話の続きを思い出した。 ……たとえ野山で 川原で 寂しくのたれ死ぬごどんなったとて なんも悲しむことはねえ 生きているうちに しで来たごどを ちゃんと仏様は見でおられるからだ 仏様はいづでもどこでも 必ず救いにやって来る…… だんだん激しくなる痛みに耐えかねて、男は額に脂汗をかきながらうめき声を上げた。 *** 橋の上でふと足を止めた一人の少女が、川原に集まった猫の群れに気づいた。 そして、群れの中でもがき苦しむ男の姿も……。 少女はジョギングしている大人たちを捕まえてこう呼びかけた。 「お願いですから……あの人を……助けてください あの人は今まで……たくさんの猫の命を助けた人なの……」 marc&nagiwo
by nagiwo
| 2007-01-24 18:57
| Collabo-Works
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