collabo-works怪談絵巻 3

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collabo-worksとは!?


「 帰る 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



「サトちゃん・・・・・・」

娘がまだ暗いうちから掃除をしている。
スーッ、スーッと雑巾がけをするような音がした。
「すまないねえ・・・・・・」
老婆は縁側に向かって声をかけた。。
台所から朝御飯の支度をする音が聞こえてきた。
まな板を、トントン、トントンと包丁で叩く音。
やがて味噌汁の香りが部屋まで漂ってきた。

昨夜遅く帰って来た娘が、襖の向こうから、
「おみやげ、なんにもなかったから・・・・・・」と言う。
「あんたが来てくれたらそれでいいの」と母は答えた。
娘の部屋はずっとそのままにしてあったから、
きっと寝心地が良かったに違いない。
「よく眠れた?サトちゃん・・・・・・」
と声をかけると、しくしくすすり泣く声が聞こえてきた。
老婆はもらい泣きしながら声を振り絞った。

「よく、帰って来てくれたわねえ・・・・・・」

***

刑事は額の汗を拭った。
婦人に椅子を勧めながら手帳を開いた。

「私は、ヘルパーの宮川と申します。
寝たきりのお婆ちゃんのお世話をしていました。
昨日は、お盆が来るので、山の上のお墓を掃除しました。
ゆうべ、そのことをお婆ちゃんに報告したら、
「あそこのお花、咲いてましたか?」と聞かれました。
ハイとお答えすると、とっても喜んで、
「他ではどこにも咲いてないのよ」って。
今朝は買ってきた食材をいつものように調理しました。
でも、お婆ちゃんの部屋が変に静かでしたので、
すぐに様子を見に行ったんです。
起きてるの?と聞いても返事がなくって、
私、襖を開けました。
そしたら・・・・・・、お婆ちゃんが・・・・・・、
昔、旅先で自殺したという娘さんの写真に、ぴったり頬をつけて、
まるで赤ちゃんでもあやしているようなお顔をなさって・・・・・・」

それまでの険しい表情だった刑事がため息をついた。
「事故に遭った可能性は、なさそうですね」


第一発見者である宮川夫人は、帰り際にこんなことを言った。

「あの・・・・・・
ひとつだけ不思議なことがあるんですが。
枕元にあった薄紅色のお花ですけど、
どうしてお婆ちゃんの枕元にあったのかと・・・・・・」
「誰かが摘んで来てあげたのでしょう」と刑事が言うと、
宮川夫人は怪訝そうな顔をして言った。

「わざわざ夜中に、山の墓地まで行ってですか?」



                              marc&nagiwo



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by nagiwo | 2004-08-06 19:53 | Collabo-Works
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