カテゴリ:Collabo-Works( 15 )

collabo-works怪談絵巻 4

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collabo-worksとは!?


「 晩夏 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



「竹の沢(タゲノソ)の水が飲みでえ・・・・・・」

と曾祖母が臨終の床で言ったのだという。
子供だった父はやかんを取ってすぐ外に飛び出した。
シキナイの坂を駆け上がりながら計算した。
竹の沢までは自分の足で片道30分はかかる。
沢まで登るのに30分、下りるのに30分、
戻るのに30分、2時間も婆ちゃが生きているだろうか?と。

泣き声を上げて海沿いの道を走りながら、
水平線を見るとイカ釣り船の灯りが煌いていた。
左前方に真っ黒な岩肌をさらした竹の沢が姿を現した。
崖をよじ登る時、一度やかんを落としてしまった。
「落ぢ着げやい!」
やがて頭上にちょろちょろと水の音がした。
沢に駆け上がって手で湧き水を掬った。
しまった、この時間を計算に入れていなかった。

早う!・・・早う!・・・水たまれちゃ~・・・

水を入れたやかんを持って駆け下りるとき、
崖から滑り落ちて、やかんの水が半分になった。
躊躇したがすぐに決心して、傷だらけになりながら下山した。
海辺の道をとって返した。
すでに辺りは日が暮れて真っ暗になっていた。
オサキ山トンネルの前まで来た時のことだった。

そこに、いるはずのない婆ちゃが立っていたという。
枯れ枝のようにやせ細った手で合掌しながら・・・・・・

父が立ち止まると、婆ちゃは消えた。

「婆ちゃ~・・・待っでくりや~・・・」
父はあらん限り力を振り絞って走りだした。
心臓が口から飛び出すかと思われた。
息をきらして家に戻ると、婆ちゃは死んでいた。
「竹の沢(タゲノソ)の水~ッ」と父が泣いてすがると、

母親(私の祖母)がやかんの水をたっぷり指につけて、
曾祖母の唇を濡らしながらこう言ったという。

「死ぬ前(めえ)に・・・・・・ 
うんめ(美味しい)水だなアで、手合わしでだよ・・・・・・」



                              marc&nagiwo



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by nagiwo | 2004-09-12 22:40 | Collabo-Works

collabo-works怪談絵巻 3

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collabo-worksとは!?


「 帰る 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



「サトちゃん・・・・・・」

娘がまだ暗いうちから掃除をしている。
スーッ、スーッと雑巾がけをするような音がした。
「すまないねえ・・・・・・」
老婆は縁側に向かって声をかけた。。
台所から朝御飯の支度をする音が聞こえてきた。
まな板を、トントン、トントンと包丁で叩く音。
やがて味噌汁の香りが部屋まで漂ってきた。

昨夜遅く帰って来た娘が、襖の向こうから、
「おみやげ、なんにもなかったから・・・・・・」と言う。
「あんたが来てくれたらそれでいいの」と母は答えた。
娘の部屋はずっとそのままにしてあったから、
きっと寝心地が良かったに違いない。
「よく眠れた?サトちゃん・・・・・・」
と声をかけると、しくしくすすり泣く声が聞こえてきた。
老婆はもらい泣きしながら声を振り絞った。

「よく、帰って来てくれたわねえ・・・・・・」

***

刑事は額の汗を拭った。
婦人に椅子を勧めながら手帳を開いた。

「私は、ヘルパーの宮川と申します。
寝たきりのお婆ちゃんのお世話をしていました。
昨日は、お盆が来るので、山の上のお墓を掃除しました。
ゆうべ、そのことをお婆ちゃんに報告したら、
「あそこのお花、咲いてましたか?」と聞かれました。
ハイとお答えすると、とっても喜んで、
「他ではどこにも咲いてないのよ」って。
今朝は買ってきた食材をいつものように調理しました。
でも、お婆ちゃんの部屋が変に静かでしたので、
すぐに様子を見に行ったんです。
起きてるの?と聞いても返事がなくって、
私、襖を開けました。
そしたら・・・・・・、お婆ちゃんが・・・・・・、
昔、旅先で自殺したという娘さんの写真に、ぴったり頬をつけて、
まるで赤ちゃんでもあやしているようなお顔をなさって・・・・・・」

それまでの険しい表情だった刑事がため息をついた。
「事故に遭った可能性は、なさそうですね」


第一発見者である宮川夫人は、帰り際にこんなことを言った。

「あの・・・・・・
ひとつだけ不思議なことがあるんですが。
枕元にあった薄紅色のお花ですけど、
どうしてお婆ちゃんの枕元にあったのかと・・・・・・」
「誰かが摘んで来てあげたのでしょう」と刑事が言うと、
宮川夫人は怪訝そうな顔をして言った。

「わざわざ夜中に、山の墓地まで行ってですか?」



                              marc&nagiwo



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by nagiwo | 2004-08-06 19:53 | Collabo-Works

collabo-works怪談絵巻 2

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collabo-worksとは!?


「 山上 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo



「あたしが死んだら、あの山の上に埋めておくれよ」

母はいつもそう言って笑っていたものだ。
母の死など思ってもみなかったが、冬のある日のこと、
風邪をこじらせた母が重い肺炎にかかったときは、
苦しそうにしている母を見て、言うとおりにしようと心に誓った。

その山の上には、何があるわけでもなかった。
頂には、雑木林や竹藪などがあり、ちょうど街を見下ろせるあたりに、
柔らかい土が露出していた。

僕は若い頃からの博打好きで、病院の帰り母を車に置いてはよくパチンコをした。
母は、「♪はるかな海に陽は沈み、月が高みにかかるころ、
街の灯りがきらきらと・・・なんて歌の本をさ、
子供のあんたに読んで聞かせたから、
パチンコ屋の灯りが好きになったんだわねえ、早く帰っておいでよ」
といつものように笑って手を振った。
母の歌は、いつもそこで終わる。思い出せないのだ、僕にも。

我を忘れた。

打ちひしがれて帰って来ると、車の中で母が苦しげに息をしていた。
「母ちゃん・・・・・・」母は返事をしなかった。
急いで病院へ引き返した。
集中治療室へ運ばれる母の小さな身体を、ぶるぶる震えながら見ていた。
それが母の・・・・・・最後となった。

「母ちゃん、置いて行かないで・・・・・・」

次の夜、泣きながら母を背負って山に登り、約束を守った。
泣くだけ泣いた翌朝、家には戻らなかった。
路上とパチンコ屋を往復しながら、乞食のように暮らした。
母を置き去りにしたことを思い出すたび、胸をかきむしられるようだった。

いつも路上から、母のいる山が見えていた。
夏の夕暮れ、その山に登る気になった。
3度崖からすべり落ち、3度木の枝に頬を打たれた。
ひとしきり強い雨が降って、びしょ濡れになった。
山頂近くのくぬぎ林まで来ると、鳥が鳴き騒いだ。

母が怒っている・・・・・・

泥にまみれ、傷だらけになり、雨に濡れて、
ようやく山の頂に着いたとき・・・・・・それを見た。

全身に鳥肌が立った。
埋葬した母の周りに、花が咲いていた。


思い出した・・・・・・

♪はるかな海に陽は沈み
月が高みにかかるころ
街の灯りがきらきらと・・・

またたく星をつれてくる
お花も咲いた 鳥も来た
みんなあなたに会いたくて



                              marc&nagiwo




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by nagiwo | 2004-07-10 20:28 | Collabo-Works

collabo-works 怪談絵巻 1

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collabo-worksとは!?


「 命の渚にて 」
   Storyteller:marc ishiya
   Photograph:nagiwo


夕暮れの渚を歩いてたどり着いた場所は、
子供の頃遊んだことのある河口の近くだった。
色とりどりの小さなガラスの破片が波にもまれて丸くなっている。
乾ききった流木の姿には、山の斜面を緑で覆っていたころの面影はない。
やがて夕日が沈む頃、男はタバコに火をつけて海を眺めていた。
突然、手にかけてしまった女の顔が脳裏に浮かんだ。


渚の近くにいた漁師が大声を上げた。
この距離では聞こえない。
男は、ゆっくりと砂を払って立ち上がった。
ザッ、ザッと砂を踏みしめながら渚へと下りていった。

「おなごだ、おなごがあがった・・・」

指さす波間に、見覚えのある白いコートが見えた。
男は、その場に膝を折り、両手をついてうずくまった。

ゆうだちが来た。

                              marc&nagiwo




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by nagiwo | 2004-06-13 21:25 | Collabo-Works

collabo-works怪談絵巻 marc&nagiwo Start

「怪談百八つ物語」を主催される石屋まーくさんの怪談と
私、「ナギヲWorks」のナギヲによる写真のコラボレーション、
「怪談絵巻 marc&nagiwo」をスタートさせることになりました。
UPは不定期ですが、二人それぞれの持ち味がどんな融合、効果をもたらすのか
collabo-works 怪談絵巻をどうぞお楽しみ下さい。

marc&nagiwo 




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by nagiwo | 2004-06-13 21:21 | Collabo-Works